Junsuke Inatomi, "Untitled", 2026, Ceramic
GALLERY crossingでは、10月17日(土)〜11月1日(日)の会期にて、稲富淳輔の個展「つきとうてな」を開催いたします。当ギャラリーでは3年ぶり、4度目となる展覧会です。
1981年、大阪府生まれの稲富淳輔は、陶芸家の父を持ち、自らも陶芸を学んだ後、現在は大阪のスタジオを拠点に制作活動を行っています。作品は、手捻りによる造形と、白を基調とした化粧土、釉薬による表現を主に制作され、造形的でありながら、陶という素材に紐づく様々な文脈を内包することで鑑賞者の情感を招き入れるうつわとして存在します。抑えられた色調の内側には、無/有、生/死の両義的な印象が重なり合う複雑さがあり、また、内から外へ緩やかに張り出す造形からは、機能や意味性を超えた静物としての美しい眼差しを感じます。
稲富はこれまで、様々な造形のバリエーションを展開してきましたが、今展では、うつわの初源的な造形であり、生命を宿す豊かさのかたちでもある、丸みを帯びた造形に取り組んでいます。彼の作品を語ろうとするとき、繰り返し浮かぶのは、祈りや光、美しさ、といった言葉ですが、今回の制作過程には、それら触れられないものを示す大きな言葉から、私たちの生きる時間に引き寄せた肉体的な「胎」という言葉への、作者の視座の変化が見てとれます。
2014年の個展「月よむ骨」(柿傳ギャラリー/東京)からはじまった、手の届かない月を見上げる眼差しから、見えないが触れられる、身体の内側に宿る生命への眼差しへ。「つき(月)」と「うてな(台)」という言葉から生まれた風景が、「胎」という一文字を通して、内側へと反転していく。その見立ての変化が、どのような景色を生み出すのか。陶芸家として、造形家として、ひとつの原点に立ち戻ることで新たに深まる表現を、ご高覧いただければ幸いです。