Filipa Tojal, "Passing Through Ⅲ", 2026, Pigments and oil on primed canvas, 330 x 240 mm
Natsumi Kobayashi, Grass and Water, 2026, Oil-Vased ink on paper, Paper size 240 x 380 mm
GALLERY crossingでは、7月18日(土)〜8月2日(日)の会期にて、ポルトガル在住のビジュアルアーティスト・フィリッパ・トジャルと、東京を拠点に版画制作を行う小林夏美による二人展「nivas」を開催いたします。
1993年、ポルトガル生まれのトジャルは、ポルト美術大学で美術を学んだ後、4年間日本に滞在し、東京藝術大学で修士号を取得。現在はポルトガルを拠点に、ペインティングを中心とした制作活動を行っています。トジャルは、自然や風景への深い観察とcontemplation(観想)を通じて、記憶と現在の体験、意図と偶然の交差点を探り、それらを絵画の物質性や時間性のなかで扱っています。風景そのものの再現ではなく、その気配や感覚、記憶の痕跡を喚起する絵画は、鑑賞者に移ろいゆく時間や土地との関係性を感じさせ、静かな観察と思索へと導きます。西洋・東洋それぞれの画材や技法を重ね合わせながら素材そのものへの研究を深め、近年は絵画の枠組みを越えて空間全体との関係性を重視し、収集したオブジェクトや建築的要素を用いたインスタレーションも展開しています。
1986年生まれ、東京を拠点にリトグラフを基にした版を用い版画制作を行う小林夏美は、武蔵野美術大学でデザインを学び、造園の仕事に携わった経歴を持ちます。独学で学んだ版画技法を応用し、遠くの風景と自らの生活にある近景を相互にまなざしながら、遠近、内外を行き来する視点をひとつの画面に重ねることで、対象物ではなく、眺めることそのものを描き出しています。「とりわけ私は自分の庭のことを遠くを近くに映す鏡のようにとらえてきました。」と語る小林にとって、庭に置かれた水鉢は、遠くの記憶の中の湖を映すものであり、生える植物や、そこに集まる動物によって、より広い世界を手繰り寄せる装置でもあるのです。
トジャルと小林の絵画は、異なる技法で制作されながら、いずれも微細な色調の変化や重なり、ずれ、反復によって構成され、気配や感覚、記憶の痕跡を呼び起こそうとする点に共通性が見られます。今展のタイトル「nivas」は、16世紀に日本を訪れていたポルトガル人たちが、日本庭園のことを日本語の庭(にわ)に由来する「nivas」と呼んでいたことから名付けられました。遠くと近く、内と外、西洋と東洋。そのあわいに立ち上がる架空の庭で、二人のアーティストのまなざしが重なります。また、本展に際しては短期間の滞在制作を予定しており、ギャラリーのある美濃加茂で制作された小作品も展示されます。