世界全体が変容し不安的な中、日々への眼差しにこそ、琴線に触れる美への気づきがあると何度も実感したこの数年間を経て、改めて光井威善の器を中心としたシリーズ《silence》をギャラリーの白い空間に立ち現れる景色として眺めてみたいと思った。
「広島から富山に来て一番うれしかったことは雪景色を見られることでした。喧噪な朝の交通渋滞の景色が、雪が降り積もった時だけ雪の消音効果により静寂に包まれる状態があります。そしてなぜか雪が降ると逆に暖かく感じる。その心地よい違和感に惹かれ、作品もそういった類の静謐な安らかさを目指しています」と光井威善。
緊張と緩和というテーマの中で、吹きガラスによる制作をする光井の代表作《silence》は-色ガラスを使ってモノトーンの空気感を生む-という試みに始まり、確かな造形力と美意識によってその魅力を増している。新たな年に、ガラスの向こうにある美しい景色を想像し、日々への贈り物のような時間を共有できれば幸いです。